夜の帳のはなし
夜。裸足でベランダに出たら。
空気はひんやりと澄んでいて、
ベランダから身を乗り出すと、眼下には真っ暗な墓地が広がっていて、
目を凝らすと白い墓標がいくつも並んでいるのが、かすかにみえて、
墓地の周りは、明かりを消した家々の黒い大きなかたまりに囲まれていて。
街全体が静まり返っていて、
その、ずっと先には、いくつかの高層ビルの赤ランプが、ずれたテンポで点滅し続けているのが見えて、
それをぼんやりと眺めていると、時折、遠くを走る電車の音が聞こえて。
空は灰色の雲が、一面に薄くかかっているんだけれど、
それでも、少しだけ星が見えて、
どこからか、さらさらと鳴く鈴虫の声が聞こえたりもして。
タバコを吸ったことないんだけれど。
いま、たぶん
めっちゃタバコ吸いたい
って気持ちなんだろうなと思った。