99日目の夜のはなし

 

ニュー・シネマ・パラダイス」という美しい映画があるのですが、映画を見終わった後に、その内容そっちのけで考え込んでしまったことがあって、それは劇中で登場するサイドストーリーについてなんですが、人によってかなり解釈が分かれるものかと思われるので、このブログを読む人にも一緒に考えて欲しいなと思って、可能な限り原文のままでそのストーリーを再現してみます。

 

 

 

恋に悩む青年に、老人はあるおとぎ話を聞かせます。

 

「昔むかし、王様がパーティーを開き、国中の美しい貴婦人が集まった。

 

ある護衛の兵士が王女が通るのを見た。王女が一番美しかった。兵士は恋に落ちた。だが、王女と兵士ではどうしようもない。

 

でも、ある日、ついに兵士は王女に話しかけた。貴女なしでは生きていけぬと言った。

 

王女は彼の深い思いに驚き、そしてこう言った。

 

”100日の間 昼も夜も 私のバルコニーの下で

待ってくれたなら わたしはあなたのものになります” 

 

兵士は喜んで、それから、すぐにバルコニーの下に立った。

2日… 10日 20日経った。

 

毎晩、王女は窓から見たが兵士は動かない。

 

雨の日も、風の日も、雪が降っても、鳥が糞をし、蜂が刺しても、兵士は動かなかった。

 

そして、90日が過ぎた。

 

兵士は、ひからびて、真っ白になった。眼から涙が滴り落ちた。涙をおさえる力もなかった。眠る気力さえなかった。

 

王女はずっと見守っていた。

 

99日目の夜。

 

兵士は立ち上がった。

 

そして 椅子を持ってどこかへ行ってしまった。」

 

 

 

 

 

正直はじめてこの話を聞いたときは

 

「エーーーー! もったいない!」

 

って僕は思いました。

 

でも、みんな思うでしょう。「どうして?」って。

 

だって、あと1日で王女と一緒になれたのに。

 

劇中でも答えは明かされません。

 

青年は、話を聞き終わってすぐに「どうしてだ?」と問いますが、老人は「理由はわからん。わかったら教えてくれ。」とこたえて立ち去ってしまいます。

 

 

 

…どうして、兵士は最後の夜に立ち去ってしまったのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

いろいろ考えたり、直接人に尋ねてみたり、ネットで人の感想を覗いてみたんですが、自分と同じことを書いてるひとが見つからなくって、だからこのブログでは、僕の考えを書いてみます。

 

その前にいくつか考えられる理由を挙げてみます。

 

1. 急用があったから

2. 疲労が限界に達したから

3. 冷めたから(自分がクソ辛い思いをしているのに、ちっとも手を差し伸べてくれない王女にうんざり、 等)

4. 王女の本当の気持ちを知るのが怖かったから(実はもてあそばれていただけ、等)

5. 総合的に検討した結果、王女は自分に敢えて「別れ」を告げてくるかもしれないと考えたから(そんなもんは聞きとうない)。

6. 一緒になれたとして、自分が王女を幸せにしてあげることは出来ないと考えたから。(国を追われたり、処刑されたり、いろいろ)

7. 「約束」が王女の行動を「気持ちの発露」でなく「義務の強制」に変えさせてしまうのではないかと危惧されたから(何かと引き換えに得た愛は純粋に自分に向けられたものたりうるのか?)

 

 

 

ちなみに、以下の理由から、僕は、兵士と王女は両思いであったと推察します。

 

・国中の美女が集まるパーティーを開くような国王には、王女もうんざりしているかと思いますし、兵士告白に本気で心奪われていても不思議ではありません。

 

・また、立場上、慎重にならざるを得ないため、兵士の気持ちを確かめる為にめんどくさい条件を提示するのも理解出来ます。

 

・そして、なにより、王女は、99日もの間、バルコニーの下で待ちつづける兵士を追い払うことをしませんでした。それくらいのことは、王女の権限をもってすれば容易く命令できたはずなのに。

 

 

 

 

僕が最初に思いついたのは7でした。でも、約束を提示したのは王女なので、この線はちょっと薄めかなと思っています。あってもおかしくないかなとは思うけど。

 

 

人に聞いたりネットで調べたりした結果、どうやら6が一番有力のようです。

 

でも、僕は、それだけでは説明しきれていない部分があるんじゃないかと思っていて、

 

 

それは、なぜ、最後の夜、「99日目」の夜に、兵士は立ち去ってしまったのか。という部分です。

 

 

ここが分からなくて、僕はずっと考えていたんですけど。

 

 

恐らく、兵士は、自身の願いを成就させるための、最も合理的方法をとったのではないかと、考えています。

 

 

 

 

 兵士はバルコニーの下で、約束の時間が経つまでの長い時間、考え続けたと思います。

 

自分が「何」の為にこの場にいるのか。

 

自分が「本当に欲しいもの」はなにか。

 

自分の本当に願うことはなにか。 

 

 

そして、あるとき、気づいたのではないでしょうか。

 

自分が望むもの。

 

「それ」は、もしかすると、このまま約束が果たされてしまったならば、壊れてしまうものなのではないか。

 

そして、実は、自分はすでに「それ」を手にしているのではないだろうか。

 

だとしたら、バルコニーの下で待つ、この時間、今この瞬間が、自分にとって、もっとも、幸福な時間なのではないか、と。

 

 

「それ」は「王女からの兵士へ向けられる、純粋な想い」だと、僕は思います。

 

 

 

そして、兵士の辿り着いた本当の願いは

 

いま確かに存在する「それ」が壊れることなく、王女の心の中に、強く、残りつづけること、だった。

 

 

その願いを成就させる方法はただひとつ。

 

 

王女の想いがもっとも高まる、99日目の夜に、自分が姿を消すことです。

 

 

 

 

 

 

 

わがままですよね。99日間、胸をときめかせて、バルコニーの上で、待ち続けた王女の気持ちも考えてあげてください。

 

 

 

でも、わがままで何が悪いんでしょうかね。