適当なはなし

 

 「適当」とか「いい加減」という日本語は、その字面からして、本来は「ちょうど良い、状況に応じた、その目的に合致した」という意味であるはずなのに、往々にして「大雑把」とか「不正確」という、その見た目とは全く真逆の意味で使われています。

 

不思議に思ったことはありませんか。なぜこのような使われ方をするようになったのでしょうか。

 

実は、言葉の歴史を辿ることで、その意味の変遷を理解することが出来ます。

 

これらの言葉を日本人が頻繁に使うようになったのは、実は戦後からです。

 

敗戦後、勝戦国からの文化の流入は、日本の文化に大きな影響を与えましたが、このとき、最も人々を驚かせ喜ばせたのは、実は、勝戦国からの「食文化」の流入でした。

 

戦争に勝つ為、貧しい食生活を強いられていた日本人でしたが、敗戦後、突如として流れ込んで来た、これまでとは全く異なる食文化、つまり、肉や野菜、塩や砂糖、香辛料がふんだんにつかわれた「洋食」に圧倒されました。

 

そして、素直にこう思ったのです、「美味しい」と。

 

ここから先が日本人のたくしいところですが、ただただその美味しさに圧倒されるだけでなく、自分自身の手で、その料理の作ろう!調理の技術を身につけよう!と考える人が大勢出て来ました。

 

その結果、家庭で作る洋食の「レシピ本」が大ブームとなりました。

 

そして、このとき、このレシピ本において、「適当」や「いい加減」という言葉が多く使われたのです。

 

多くの出版社が、レシピ本を作って売ろうと考えましたが、彼らの頭を一番悩ませたのが、料理のさじ加減や、火加減の説明だったのです。

 

それまでは、家庭の料理というものは、家で代々、親から教わるものでした。家庭の味、おふくろの味、というやつです。したがって、西洋風のメモリのついたはかりや、ガスによる火を使った調理設備なんかがまだ無い時代でした。

 

皆がそれぞれの「家」でそれぞれの「器具」を使ってそれぞれの「味付け」で料理を作っていた時代に、一体、どうやって、一定の基準で、誰にも分かる形で、料理の作り方を説明したらよいのか。

 

 出版社の辿り着いた答えは「ごまかす」ことでした。

 

ごまかす、というと、聞こえは悪いですが、結局のところ、料理なんてものは、人によって、ちょうど良い火の通り具合や、甘さ辛さ等があるので、各人、好きな用につくるのが正解なのです。

 

それぞれの、ご家庭の皆様の舌に合うように作ってください。という意味で、さじ加減や火加減について、「適当」や「いい加減」という言葉を多様するようになりました。

 

 ところが、多くの人が、はじめて作る料理です。ちょうど良くやれ、といわれても、どれくらいがちょうど良いのか、誰もわかりません。

 

結果、同じレシピを参考にして作っても、人によって出来上がるものは多種多様という状況が多く生まれてしまいました。

 

そのうち、このことを皮肉って、「大雑把」だとか「丁寧でない」のことを表すのに、「適当」や「いい加減」という言葉を使う人が出て来ました。

 

 お前さん、そんな雑なやりかたじゃあ、まるでレシピ本の「適当」や「いい加減」と一緒じゃあないか!

 

と言った具合に。

 

 この用法には多くの人に、共感するところ、理解できるところがあったので、瞬く間に全国に浸透しました。

 

かくして、「適当」とか「いい加減」という言葉は、本来の意味とは、全く正反対の意味を持つことになってしまったのです。

 

 

 

 

 

という話を、いま適当に考えてみました。

 

おしまい。

 

 

 

 

※ここで書いた話は、最初から最後まで僕が頭の中で考えた法螺話なので注意すること!

 

この話は、まったくの無根拠です。ひとつも調べてないし、ひとつも裏をとってません。

 

こうやって、ものごとの由来などを、思いつきで、全くの無根拠で、それらしい感じに、堂々と人に話すのが結構面白くって。たまに考えて頭の中で遊んでます。

 

あんまりやると絶対嫌われるし、狼少年になってしまうので、知り合い相手にはあんまりやったことなくて、僕のほら話シリーズの被害者は主に僕の家族(両親や兄弟)なんですけど、ふと良いネタが思いついたのでブログに書いてみました。

 

 たちが悪いのは、持ってる知識を組み合せて作り話をするので、内容は虚実が入り交じっているというところ。もっともっと、最悪なのは、思いのほか作り話の出来が良くて、嘘です。って宣言したものの、実はマジで合ってた。っていう時がたまにあることです。

 

上の話もちゃんと調べてないので、実はあってるかも。とかね。

 

 

 人にこれをやる時は、話が終わったたらすぐに、「…まあ、いま僕が考えたんですけど。」って、ネタばらしをするという独自ルールを徹底して守っているので、僕とおしゃべりしたことがあるひと、おしゃべりするひとは、安心してください。

 

または、「これは、いま考えたはなしなんやけど」という、嘘宣言を置きにして、しゃべりはじめるパターンもあります。今回は実はタイトルでさりげなくそれをやってるので、二段構えですね。

 

 

最近かなしい記事ばっかりだったので、ちょっとふざけた記事を書いてみました。

 

 実際どうして、「適当』や「いい加減」が真逆の意味になったのか、普通に気になるので、きちんと知ってる人がいたら教えてください。