迷子のはなし


僕の寝室には、天井に大きなプロペラがくっついており、スイッチをオンにするとそいつがくるくると回転して、部屋の空気をかき混ぜることが出来る。(シーリングファンと呼ぶらしい。)

 

イメージとしては天井にでかい扇風機がついているようなもので、実際、早めに回転させるとけっこう涼しい風が頭上から降りてくるので、暑い時期には毎日フル稼働で回し続けている。

 

それで。昨日の夜は、蒸し暑いやら、涼しいやら、やたら風が吹き荒れているやらで、わけ分からない天気だったせいか、なんだか寝付きが悪く、夜遅くまでベッドの上で転がり回っていたのだけれど、いつの間にやら眠りに落ちていて、あれはちょうど夜明け前のころだったと思う。

 

何やらバチン、ガツン、バタバタとやかましい物音がするので、意識を取り戻したんだけれど、部屋は薄暗くて、おまけに寝起きでなかなか目が開かないから、何が起こっているのか分からない。

 

しばらく音だけを聞いていたんだけれど、何か生き物が羽ばたいているらしい音が聞き分けられたので、どうやら部屋に鳥が、しかも、結構大きめの鳥が迷い込んで来たらしいということが分かった。

 

 

このところ、窓を開けて過ごすのが快適な時期で、網戸を締め忘れて寝ることがちょいちょいあったので、「しまった。窓をあけっぱなしにして寝たせいで、部屋に鳥が入って来てしまった。」と、思った。

 

 

天井付近でバタバタと騒ぎつづけるので、もしかしてと思って、重いまぶたを押し開け、シーリングファンのほうをみると、そのプロパラにかなり大きい鳥が「ひっかかっている」。

 

なにがどう「ひっかかっている」のかは、よく見えなくて分からなかったんだけども、そいつがかなり不本意にそこに留まっているっぽいことは十分に伝わって来て、とにかく「ひっかかっている」らしい。

 

立派な羽がぼさぼさになって、大きく両翼を開く形でもがいている。鳥の顔がちょうどこちら側を向いているので、仰向けに眠る自分と対面する形になっていて、もし彼が「ひっかかって」いなかったなら、ちょうど自分が獲物として引っ捕らえられる寸前の構図になっている。

 

音だけを聞いていたときは、カラスかしら?と思っていたが、姿をみとめると、カラスよりずっと大きな鳥である。

 

鷹?鷲?鳶?


 

鳥に詳しくないのでよく分からない。でも凛々しくてカッコイイ顔をした鳥である。

 

 

早く助けてやらなくてはと思い、ベッドわきの照明に手を伸ばす。紐を引くと明かりがつくはずなのに、つかない。

 

あれ?と思うと同時に、鳥がヒューヒューと苦しそうな声を上げて自分を見つめているのに気づく。

 

早くあかりをつけて、助けてやらないと、という気持ちははやるのだけれど、どうしても腕が動かない。ランプまで手が届かない。身体が動かない。

 

鳥は暴れるのを止めて、大人しくしているのだけれど、相変わらずヒューヒューとくちばしを開けて苦しそうな声を漏らしこちらを見下ろしている。

 

必死でランプに手を伸ばそうと奮闘していると、ふいにパッと身体の緊張が解けて、腕を伸ばせるようになったが、咄嗟に天井を見上げると鳥はいなくなっていた。

 

 

 

 

ということが昨日の夜ありました。

 

金縛りには昔からよくあっていたんだけれど、現実と混ざり合った夢とのコンボははじめてで、とても不思議な体験をしたな〜と言う気になりました。

 

初夢は、一富士二鷹三茄子というけれど、初じゃない夢も鷹が出てくると縁起がいいのかな。助けることはできなかったけどさ。

 

いいことありますように。